パワーステアリングの役割
パワーステアリングラックは、ドライバーのハンドル操作をタイヤに伝える機構です。
パワーステアリングポンプ(または電動モーター)によって、タイヤと路面との摩擦抵抗に応じた補助動力が加わることで、重い車両でも少ない力で、軽快かつスムーズにハンドル操作を行うことができます。
アシスト方式の種類
- 油圧式(HPS:Hydraulic Power Steering)
- 電動式(EPS:Electric Power Steering)
油圧式の作動原理
直進時
パワーステアリングラックには、ピストン一体型のパワーシリンダーが備わっており、ピストンによって左右の油圧室に仕切られています。
ステアリング操作がない直進時には、パワーステアリングポンプから送られる加圧フルードが左右の油圧室に均等に供給され、油圧が左右で等しく保たれます。
そのため、ピストンに油圧差が生じず、ラックに力が加わらないため、アシストは行われません。
ハンドル操作・旋回時
ハンドルを切ると、路面からの抵抗が大きくなり、油圧に差が生まれます。
この油圧差がパワーシリンダー内で左右に力を発生させ、ラックを動かす補助力として働きます。
これにより、ドライバーの操作力を軽減し、スムーズなステアリングが可能になります。
また、操作性の向上と安全性の確保のため、ステアリングの操作力は車速に応じて変化するように設計されています。
低速時には軽い操作感を、高速時には適度な手応えを持たせることで、安全性と操縦性の両立が図られています。
よくある故障の症状
- フルード漏れ
- オイルシールの劣化・損傷
- ラックケースの腐食やクラック
- ホースや配管のひび割れ・接続部の緩み
- ガタつき
- タイロッドエンドやラックエンドの摩耗
- ラックギアとピニオンの摩耗
- ジョイント部の摩耗
- ラックのブッシュの劣化
- 異音
- エア噛み
- ラック内部の摩耗や異物の混入
- ステアリングジョイントやベアリングの劣化
- フルードの劣化や不足
- ハンドルが重い
- ラック内部の摺動部の摩耗や引っかかり
- ラック内部詰まりや固着
- パワステフルードの不足や劣化
- パワーステアリングポンプ側の異常